プロの技~移染除去作業~
今回は、先日実際にご相談に来られたお客様の「移染」してしまった衣類の「移染除去作業」についてご紹介したいと思います。
移染とは?
ご家庭でも「洗濯機で衣類を洗ったら繊維の染料が流れ出して、他の衣類に色が移ってしまった」「切り替えのある洋服で、濃い方の色が薄い色の部分に移ってしまった」「衣類同士が擦れたら色が変わってしまった」などという事象をご覧になったことがあるかと思います。
これらは衣類の移染事故と呼ばれます。
本来繊維は染められた染料が流れ出さないよう、色を落ち着かせる処理がされています。しかしこの処理が甘いと、洗濯したときや擦れたときに色が流れ出てしまうことがあるのです。
染色堅牢度とは?
染色の丈夫さを測る規格として「染色堅牢度」がJISによって定められています。
たとえば染色された繊維は、日光、風雨、洗濯、汗、摩擦、塩素漂白、海水、ドライクリーニングなどの作用により変色または退色しますが、これらに対する抵抗性を染色堅牢度といい、レベルで表すのです。染色堅牢度が高ければ抵抗性が高く(移染や変色が少なく)、染色堅牢度が低ければ、何かの拍子に色が流れ出てくる可能性が高い、ということです。
移染除去作業
さて話を先のお客様の衣類に戻します。
■お気に入りのカジュアルシャツを雨の日に着用したら色が出てしまった
一目見て色ムラになっているのが確認できるぐらい、色が流れてしまっています。
テストしてみたところ、染色が極めて悪く、染色堅牢度が5段階中の最低レベル【1】であることが分かりました。
染色堅牢度が【1】というのはどの程度の状態か、というと、例えるなら紅茶のティーパックですかね(^_^;)
水に濡れると間違いなく染料が流れ出てしまう程度を指します。
お客様には「染色不良品として返品した方がいいですよ」とお勧めしたのですが、
・オークションで落札した衣類であること
・大変気に入っていて想いのこもったシャツであること
・費用が掛かってでも何とかして欲しいこと
を鑑みてご依頼を受けることにしました。
移染除去剤と特殊洗浄槽
このシャツの色柄に注目していただくと、濃いブルーと白っぽい色の縞模様であることが分かります。
濃いブルーの色が出なくなるまで染料を洗い流し、同時に白っぽい線に移ってしまった色を抜かなければいけません。
こんな時、私たちプロが使用する特殊薬品に「移染除去剤」という液体があります。
①通常、部分的なシミ抜きであればほんの数滴程度の使用ですが、今回は範囲が広く全体的に処置をしなければならないため、通常の20万倍にあたる100㏄を用意しました。
移染除去剤にも色々な種類があります。またどの程度の量を必要とするのかを見極めるのは、プロの経験とカンでもあります。
②この移染除去剤を特殊な洗浄槽に入れます。薬品の効果を最大限に引き出すためには、温度を上げて一定に保つ必要があるのです。更に特殊な洗浄槽は、循環ポンプ式でムラが出ないよう絶えず溶液を循環させています。
何度の薬剤液に何分浸けおきするのか、それもプロの経験と技術によるところです。
③今回は40℃の溶液に15分浸けました。
驚くほど染料が流れ出ていますね。
一旦取り出して、水で良く濯ぎます。
移染除去作業は様子を見ながら繰り返し
上記の手順を再度繰り返します。
2回目は先ほどと同じ40℃で20分、3回目は50℃に温度を上げ、時間を少し短くしました。
4回目は更に60度まで上げ10分。
色の流出は止まったようです。
これでもまだ色が出る場合には、最終手段として80℃で5分浸ける方法もあるにはありますが、繊維をいためることに繋がりますので、本当に最終手段です(^_^;)
完成したシャツはこんなにキレイに
4回の浸け込みにより、染料が流れ出すことも無くなり、白であったはずの色もくっきり戻りました。
皆さんも気に入っていた衣類が何かの拍子に変色したり、色移りがしたり、ということがあるかも知れません。
ご家庭では処理が難しいことがほとんどですので、無理をせず専門家を頼ってくださいね。
お洗濯の疑問やご不明なことがあれば、山口県岩国市の【さくらクリーニング】にご相談ください(^O^)/